やる気がある先生ほど、なぜ学校を辞めてしまうのか。

私の周りに、学校や保育園・幼稚園の先生を辞めて新しいことを始めている人が何人もいます。その数はだいたい7~8人くらいでしょうか。そんな人達と知り合い話をすることで、私は授業のカリキュラムや子どもたちとの接し方について勉強させてもらうことが多いのです。

学校を辞めた先生達に辞めた理由を聞くと、教育の現場で感じている共通のものがある気がします。

それはいったい何なのでしょう。
先生が共通して言っているのは「違和感と失望」という言葉でまとめられると感じます。

例えば、大ベテランで、保育園・幼稚園で長く先生をされていた先生はこう言いました。「今の教育のやり方やあり方に疑問を感じる、自分のやりたいと思っていることができない。自分の理想的な教育に挑戦するために辞職した」と。子どもの能力のバラつきを減らし同じ規格に育て上げるような方法ではなく、一人ひとりの個性を見て、寄り添うようなやり方をしたかったそうです。そのためにアートや音楽の力を最大限に活用していくというテーマで活動をされています。

また、ある元小学校教師の人はこう言います。「もういいやってなってしまいました。」元アスリートということもあり、明るく朗らかで前向きな方です。まさかそんな言葉が出てくるとは思っていませんでした。とても驚きました。詳しくはつっこんで聞けませんでしたが、こういうマインドになってしまう現場はストレスでいっぱいなのだろうなと想像してしまいます。

このような元先生のお話を聞いていて、2~3カ月心の隅に引っかかりながら私は過ごしていました。そして最近、ある本でこの文章を見つけました。


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◆モノづくり教の教義
・バラつきは悪である

・ルールで皆の足並みをそろえよ

・仕事は「属人化」してはならない

・失敗には必ず原因があり、二度と繰り返してはならない

・可能な限り標準化せよ・指標を決めて管理せよ

・「効率化」が全てである

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まさに教育の現場でなされていることではないでしょうか。

これは細谷功さんの『「具体⇔抽象」トレーニング』という本に書かれていたものです。この「◆モノづくり教の教義」の内容は、戦後日本が高度成長した時の成功のポイントをまとめたものです。そして教育現場にも浸透している考え方です。しかし、戦後40年間奇跡的に機能し、メイドインジャパンの製品で日本の成長を支えた成功のポイントが、2022年のデジタル社会ではどうなっているでしょう。

逆に個性を伸ばしイノベーションを起こす足かせになっているのです。

一人ひとりの個性を平均化し、ルールで皆を統制し、先生の仕事をできるだけマニュアル化し、失敗を許さず、効率を全ての優先順位の上位に置く。そんな教育が今の時代にマッチするわけがありません。全てをさかさまにすると、今の世の中に求められる教育になると思います。

「違和感と失望」私の知り合いの元先生から話を聞いて、感じたことです。この失望の原因となっているのは、モノづくり教の考え方なのだと思います。今の教育の現場を未だに縛っている◆モノづくり教の教義が変わらないかぎり、やる気のある先生がどんどん教育現場を去り学校内の人材の空洞化が進んでいくように思います。でも今の私には、この流れをすぐに変えることができません。

しかし、私は学校では受け止めきれない一人ひとりの個性を伸ばす学びの場を、学校の外に作っています(絵を描かないアートスクール=コイネー koine.jp)。そして、共感してくれる仲間を増やし、すこしづつでも社会にアピールし続けて、いつか学校教育を変えて行こうと考えています。

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