センスの鍛え方

センスとか感性とか、先天的なものであって努力で鍛えられるものではない、と思われがちです。
センスというものが抽象的で様々な捉え方があるため、捉えどころがなく難解でブラックボックス的な印象を与えているように思います。実は私もその一人でした。自分は感性は鍛えることができずセンスのない人間だと受け入れていました。

ではセンスとか感性を鍛える事ができるのでしょうか?

私は鍛えることができると考えています。
なぜなら、センスや感性を鍛えるということは、違いが分かることだからです。私はそう言い換えることができると考えています。

どういうことかというと、例えば、あなたにセンスがいいファッションをしている友達がいるとします。その人がセンスが良く見えるのは、きっとファッションアイテムの選び方が良いからです。では、どうやってセンスが良いファッションアイテムを選べるのでしょうか?それば、自分に似合うものとそうでないものの違いを認識しているからです。つまり自分が着たいものを着ているのではなく、自分に似合うものを着ているのです。
それでは、どのように自分に似合うものとそうでないものの違いを見分けているのでしょうか。
それは、多くのファッションアイテムを見て、実際に試着してみて、自分の体形や肌の色や髪型に合っているのかを自分で認識して、自分に合わなければそれを身に着けないようにしているのです。ファッションはトータルなものなので、メイクやヘアスタイルやアクセサリーとの相性も当然研究することになります。つまり自分を客観的に見る事ができていないと、センスは良くならないのです。場合によっては、ファッションのポイントを友達に説明することもあると思います。
そのようなトレーニングの積み重ねで違いを見分ける感覚を習得しているのです。

センスや感性を磨くには自分で考えて、試して、比べて、選んで、理由を言語化する必要があります。つまり、意識すれば、誰にでも鍛えたり磨いたりできるものなのです。

味覚もセンスや感性で語られることが多いですよね。数値化できなくて、人によって全然感じ方が違うものですから。でも、味覚のプロフェッショナルである料理人やソムリエなどは味覚を武器にして生きています。
感性とは違いが分かることだ、という考えをし始めてから納得したことがあります。それはソムリエがワインを言語化していることです。
価値のあるワインの味は複雑で、飲みなれていない人からすれば、値が張るワインとそうでないワインの違いに気づけないと思います。その違いを言語化して共有できるからこそ、価値のあるワインは価値を持ち続けていられるのです。
ソムリエの第一人者、田崎真也さんは『感覚を言語化する』でこう語っています。

”ワインに感じたことを言語化することによって、ソムリエどうしのワインの味わいなどの情報交換を文字や会話で表現することができます。
 また、ワインの風味をお客様に説明するのにも言葉は重要です。たとえば、あるワインに感じたことを百の単語で表現し、記憶しておけば、お客様のワインの知識レベルの差や、好みの違いに対し、二十から三十の単語を使い分けて説明することが可能です。”

センスや感性の解像度を上げるために、多くのワインを試して、比べて、選んで、感じたことを言語化し続けているのですね。
私もアート鑑賞をする時には作品から感じたことや発見したことを言葉にしています。だから独り言がとても多くなってしまいます。

私はセンスや感性を鍛えることができると考えています。
なぜなら、センスや感性を鍛えるということは、違いが分かることだからです。その違いを分かるためには、多くのサンプルに触れて、比べて、違いを認識して言葉にすることを繰り返すことです。
私は絵もファッションも食べることも大好きです。だからセンスを磨くプロセスが楽しくて無理なく続けられます。これは一生続けて行こうと思っています。

もしもセンスや感性を磨きたいのであれば、あなたの好きなことで試してみてはいかがでしょうか。世の中を見る目が少し変わると思いますよ。

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